2004年3月5日金曜日

magazine

井ノ原快彦(原案)インタビュー
リアルな青春群像劇シリーズを生んだ
詳細にまでおよぶ画的記憶力

  Date: 2004.03.05.
  From: キネマ旬報 1401号
  By: 木俣冬
  URL: http://www.kinejun.com/kinema/bkno/200403_2.html


嵐主演の青春映画! というだけに留まらず、団地という小宇宙での様々な人間の営みの描写が秀逸だった「ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY」。その第2弾「ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARD だから HAPPY」は、笑いも青春も社会のえぐり方もさらにディープになっていた。

「客観的に見ると、前作で登場人物や八塩団地という舞台設定の説明が済んでいる分、大きなストーリーが展開できたんじゃないかな」

そう語るのは原案の井ノ原快彦。「ピカンチ」シリーズは井ノ原の幼少時代の団地ライフが原案となっている。

「『ピカ☆ンチ』の時に、僕が団地に住んでいた時のエピソードを、脚本の河原雅彦さんに2時間くらいお話ししました。それを元に書いてもらったら3時間くらいの膨大な長さになってしまって、泣く泣くカットしたエピソードも含めて新たに3年後の物語をってことになったらしいけど、僕の知らないうちに台本はあがっていたんです。だから、『ピカ☆☆ンチ』に関してはあまり関わってないんですよね。出演者(鴨川かごめ役)というくらいです(笑)」

嵐・櫻井翔演じるチュウの兄・かごめはリーゼントでバリバリヤンキー風なのだが、これは井ノ原自身がモデルなのかと思ったら違うのだそう。

「実体験は作品の中にいろいろ形を変えて入っています。スケボーとか新聞配達は実体験で、僕は新聞配達していました。まさか映画で、不倫につながるとは思わなかったですけどね(劇中、大野智演じるハルが配達先の秋山菜津子演じる人妻と不倫関係に。彼らの関係は『ピカ☆☆ンチ』でも重要エピソードとなる)。河原さんはじめ、監督の堤幸彦さんなど多くのブレーンのアイデアもプラスされて物語ができていくのが、原案体験をやっておもしろかったことです。僕が鮮明に覚えている団地生活の数々ってリアルでおもしろいんだけど、娯楽映画として大きな核が必要ですもんね。前作の屋形船襲撃とか、今回の団地建設阻止とか、あんな大きなこと芸能界に入る前にやってたら、別なところで有名になってますよ(笑)。でも、やっぱりいろいろかわいい悪さはしていました。映画を見ると、このシーンって本当はこういうエピソードから発展したんだよなぁって、僕だけの見方ができるんですよ」

主役5人のような友情はやっぱり実在する。

「小中学生の頃は団地に学校があって、何をするのもずっと一緒だった友達がいます。団地内では誰もが皆の情報を知っているし。下町の人情的なものがありました。そんな彼らは、マメに連絡とらなくても会えばすぐ昔に戻れる仲間です。貧乏棟とか書いてしまって住んでる友達には悪いかなって(笑)」

記憶力がとても良くて、子供の頃の思い出も鮮明だという。誰が何を言ったのか、立ち位置まで覚えているとか。野球チームの話、秘密基地の話、蛍光灯が嫌いだという話等、活き活きと画が見えてくるような話し方をする。それらの記憶を自ら映像化できそうだが?

「脚本書いてみたら? とか監督やってみたら? というお話もいただくのですが、今の仕事の忙しさだとなかなか難しくて。映画は、デジカメと編集機買って、趣味で撮ったことはあるんです。『太の午後』っていう、友人が僕の家で過ごしているだけの短編。今楽しいのは、文章を書くことですね。ジャニーズの携帯サイトでは毎日日記を更新していて、『日経エンタテインメント!』の月1連載もやっているんですが、文章って自分で構成できるのがおもしろくて。舞台やバラエティーの中でのアドリブは、共演者がいることですからなかなか自由にやれるものではないのですが、文章は決まった文字量の中で、最後にこんなオチを持ってきてみようかなとか、表現を試せるのがいい。たとえば400字詰め原稿用紙1枚が規定だとして、最後のマスに“。”で終わるのってすごく嬉しいんです」

もっと勉強したいと、この春高校に再入学もするという。

「受験で作文を書きました。テーマは将来の夢。子供の頃の夢はもうかなえちゃったしなぁって思って、今の自分の夢ということで“世界平和”。僕ができるのは銃を持つことじゃなくて、兵士達がお腹を抱えて笑うようなものを見せることだって。それを見て、戦争している人の気持ちが変わったらいいなというのが夢というか願いですね」

最後に、「ピカンチ」シリーズ、今後も期待できそう?

「パート3もあるかなって言われてますね。嵐とも話していて、今度は来年、再来年じゃなくてリアルに10年後とかもいいなって」






「ピカ☆☆ンチ」を作らねばならなかったワケ
  Date: 2004.03.05.
  From: キネマ旬報 1401号
  By: 河原雅彦(脚本)
  URL: http://www.kinejun.com/kinema/bkno/200403_2.html


「作られるべくして作られた幸福な続編」つうことですよ、一口で言えば。

前作で嵐のみんなは実年齢より下の設定(高校生)を演じたわけでしょ? それぞれが社会に飛び立った三年後の葛藤をこのタイミングで彼らが演じるのは、ごく自然なことだと思います。作品として前作が評価されているなら尚更やんなくちゃ。で、今作は大野君演じるハルって少年が表向きは主役ってことになってるけど、松本君演じるボンて子もかなり重要な位置を占めてて。少年期に誰しも抱く青臭い幻想が足かせになって一歩も先に進めないヤツがハルなら、ボンは先に進むために無理矢理その幻想を捨ててしまったヤツ。このコントラストが作品の主軸となっています。まあ、馬鹿馬鹿しいギャグとかでそういうのは結構オブラートしてありますけどね。とはいえ、作家的に言えばこの物語に出てくる五人全員が主役です。だって、この五人が揃って初めて「失っていた何かを取り戻せる」のですから。それぞれのハイライトも、そのキャラクターなりにしっかりありますしね。嵐のメンバーは五人が五人ともキャラが立っているので本も書きやすいです、お世辞抜きで。だって、今時あります? 『アイドル映画』ってジャンルをクオリティもバッチリ伴って成立させちゃうグループって。古くはビートルズ? グループサウンズ? チェッカーズ? 男闘呼組? 最近じゃ、モー娘。? まあ、一概に比べられないけど、『青春映画』ってど真ん中をサラリと素敵にやっちゃう彼らって純粋に評価すべきだと思います。しかも今回、続編まで出来ちゃったわけですから。監督を始め、キャスト&スタッフ、そしてプロデューサーの方々全員が作りたくなかったら、普通やってませんて。その気にさせてくれたんですよ、嵐が。そして前作「ピカ☆ンチ」という作品が。僕だって、このプロジェクトに参加出来て本当に楽しかったですもん。「仕事したなあ」っていうよりは単純に「あ~おもろかった」って感じ。

あとは、そうねぇ…。前作は原案のイノッチに取材したエピソードをまんべんなく脚本に味付けさせてもらったけど、今回は続編てことで、もう気の向くまま好き勝手書かせてもらいました。だからイノッチには一人の俳優としてこの作品を楽しんでもらえたらなあ…って。…あれ? 質問の趣旨とだいぶズレてきちゃいました? じゃあ強引にまとめますと、「人は誰しも青春大好きっ!」ってことで。青春の賞味期限を決めるのは他でもない自分自身ですからね。良質な『青春映画』はこれからもあらゆる年代のニーズであり続けると思います。






世代を越えて継承される青春の姿
  Date: 2004.03.05.
  From: キネマ旬報 1401号
  By: 野村正昭
  URL: http://www.kinejun.com/kinema/bkno/200403_2.html


どうせアイドルのプロモーション・ビデオの延長線上の産物だろうと思い、東京グローブ座での限定上映にも、何となく気が進まずに、前作「ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY」は見逃したままだった。今回、新作を見てから慌ててDVDで「ピカ☆ンチ」を初めて見たけれど、2本合わせて「恋愛寫眞」や「2LDK」に匹敵する堤幸彦監督の真っ当な群像ドラマだったのには、ちょっと驚いた。どんなに映画が大ヒットしても、いやヒットすればこそ、本広克行や金子文紀や堤幸彦監督らへの風当たりは強く、その理由を挙げていくとキリがないので、ここではやめるが、そうしたあまりにも鈍感な観客たちから擁護するためにも、東京グローブ座での限定上映は正解なのだろう。

東京の辺境にあるマンモス団地に住む5人組の日常を描いた前作から3年後という設定で物語は始まる。青学合格をめざして浪人生活を送ったはずのシュン(相葉雅紀)は……何故かニット編みの達人に。ある日突然「流れ板になる」と言い残して団地を去ったボン(松本潤)は実は内緒で地元に戻り、割烹料理店で住み込みの見習いに。前作のラストでアメリカに行ったタクマ(二宮和也)は、バンドを結成し、日本で逆輸入デビューの話が持ち上がり、一時帰国の状態に。一目惚れした女の子の母親に強制的に不倫関係を迫られたハル(大野智)は、不倫継続中のままガウス八塩店に就職し食品売り場に配属。そして暴走集団「鮫洲一家」25代目総長自慢のリーゼントを下ろしたチュウ(櫻井翔)は、何と大手家電量販店に就職し、一児の父にもなっている――という劇的な変貌をとげている。

しかも団地では貧乏棟を取り壊し「八塩ヒルズ」建設という目標を掲げる自治体と、それに反対する住民運動「八塩ピース」との熾烈な戦いの真っ只中で、この5人が再開し、騒動に巻き込まれていくのだ。「八塩ピース」のリーダーで、通称“八塩のジャンヌ・ダルク”辻風真澄に扮する櫻井淳子の快演をはじめ、ハルの不倫相手・君江(秋山菜津子)や、シュウシュンの父親で、団地内有線放送の番組で、老人たちのアイドルになった勝幸(山崎一)ら、レギュラー陣(!?)のオーバーアクト気味の奮闘もあって、「青春とは、誰にとってもピカイチで、そしてハレンチなものである」という前作のテーマは、ついに世代を越えて継承かつ発展しながら暴走しているようだ。

勿論「嵐」のメンバーそれぞれの魅力が堤監督によって存分に引き出されている事実も、アイドル事情に疎い筆者には十分理解でき、ことにハルこと大野智の、口をとんがらせてオドオドと立ち振る舞う、その演技には「ひょっとして、これ本物?」と驚かされた。ラストまで、それは一貫し、芝居だとしたら大したもの、「ギルバート・グレイプ」のディカプリオ並みだなあと思っていたら、テレビのバラエティ番組で彼が普通に喋っているのを目撃し、さらに驚愕した。「ピカ☆☆☆ンチ」(ピカンチ トリプル)も、ぜひ見たくなったほどだ。

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