【レポート】
『花より男子』シリーズの仕掛け人が語る! - 大ヒット作の知られざる舞台ウラ
Date: 2008.09.04.
From: http://journal.mycom.co.jp/
By: 小林宏彰
URL: http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/09/04/hanadan/index.html
(1) 会社からは「視聴率は5%を獲れればいいから!」と言われていた
73億円もの興行収入を得た、大ヒット映画『花より男子ファイナル』。このたび、大ヒットを記念して、プロデューサーを務められた瀬戸口克陽氏、監督の石井康晴氏による特別講義が、デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパスにて行われた。感動の名シーンは、どのような過程で作られたのか? 魅力的なキャスティングは、どのように進められたのか? 「花男」(ハナダン)シリーズ、その全貌がついに明らかになる。
テレビドラマ『花より男子』誕生の瞬間
2005年のテレビドラマ化の企画を立ち上げたプロデューサーの瀬戸口克陽氏は、「花男」との出会いについてこう語る。「テレビドラマの題材を探すとき、TSUTAYAや書店をまわることが多いんですが、たまたま渋谷の大盛堂書店というところの地下で、『完全版 花より男子』(全20巻)に出会ったんです。姉がいたので昔読んだことはあったのですが、改めて読み始めるとこれが非常に面白くて。それがまずきっかけでしたね」
この大人気コミックは、1995年に公開された内田有紀主演の実写映画をはじめ、数々のクリエイターによって何度も映像化・アニメ化されてきた。では、いまなぜもう一度「花男」だったのか?
瀬戸口「ドラマの立ち上がり方には3パターンあるんです。ひとつは脚本家ありきのパターン、次にキャスティング主導のパターン。そして2000年代以降特に多くなってきたのが、原作があるパターンです。2005年当時は、少女マンガを原作にすると、特定の世代にしか興味を持たれないため、連続ドラマには向いていないと思われていましたが、やりようによっては面白くなるんじゃないかなと思っていた、その年の夏のことです。秋に放送を予定していたドラマの企画が頓挫しまして、忘れもしない8月18日に、秋のドラマをやってみたいだろ、と突然持ちかけられて(笑)。遅くとも3カ月前には主要キャストが決まっているのが当たり前なのに、クランクインまでが実質一ヶ月を切っているという、まさに異例中の異例というスタートだったんです」
「花男」シリーズのスタートは、波瀾万丈と言えるものだった。しかし、視聴者にとっては、一ヶ月前だろうが、3年間準備していようが、制作者の都合は関係ない。「ピンチをチャンスに変える」、それからが、スタッフたちの戦いの始まりだった。
つくし、道明寺、花沢類…気になるキャスティング
瀬戸口「まず、時間がないことを言い訳にしない、と決めたんです。すぐに集英社さん、作者の神尾葉子さんに会いにいってプレゼンをしました。要するに、眠らなければいいんです(笑)。そうすれば、1カ月は2カ月になるんですよ。ドラマの作り手の三原則は、寝ない、逃げない、あきらめない。これですね(笑)」
そして、気になるのはキャスティングである。牧野つくし、道明寺司、花沢類…。『花より男子』の面白さは、その魅力的なキャラクターにあると言っても過言ではない。イメージに合う役者たちを、どのように見つけ出したのだろうか?
瀬戸口「井上真央ちゃんについては、この子は牧野つくしを演じるために生まれてきたんだな、とマンガを読んだときにもう頭に浮かんでいました。事務所の方とも知り合いだったので、迷うことはなかったです。道明寺役は、俺様キャラをコミカルに演じられ、かつリーダー的な雰囲気を持っている方がよかったんです。『ごくせん』に出ていた松本潤くんは、アクが強くて個性的で、イメージにぴったりでした。彼ははじめ、僕はどちらかというと花沢類じゃないですか? と言ってたんですけど、演じていくうちに納得してくれましたね」
「花男」キャラ人気投票でも圧倒的にNO.1、特に女性から絶大な支持を集めるキャラクター・花沢類は?
瀬戸口「何を考えているのかわからないけれども優しさをたたえているという、これも難しい役どころで。つくしの初恋の相手として説得力がなくてはならないし、道明寺と二枚看板を張れる人ということで、小栗旬くんを選びました。彼は今のようにブレイクする前でしたが、芝居の力があるな、と注目していたんです。スケジュールが空いていないところを、『小栗くんじゃないとこの役はできない』と説得し続け、マネージャーさんに手紙を書いたりもして承諾してもらったんですね。彼も『寝ないで頑張りますよ』と言ってくれたのは忘れないです。それから美作役の阿部力くんは、映画の撮影で台湾に行っているという情報をつかみ、日帰りで台湾に行って(笑)、交渉したんですよ」
こうしてキャスティングが決まり、ついに撮影がスタート。井上真央、松本潤、小栗旬、松田翔太、阿部力…。当時はまだブレイク以前だった彼らだが、ドラマの人気は急上昇。会社から「(視聴率)5%獲れればいいから!」と言われていたドラマは、2005年秋クールでNO.1の視聴率を獲得、年間でも4位につけるという快挙を成し遂げたのだった。このように、奇跡的と言えるヒットを遂げた「花男」だが、当初から「このドラマは絶対にヒットする」と確信していた男がいた。その理由とはいったい何だったのだろうか?
(2) 制作・宣伝費は10億円!
「絶対ヒットする」という確信
『花より男子』のテレビドラマシリーズの演出を手がけ、今回の映画を監督した石井康晴氏はこう語る。
石井「絶対に当たるんじゃないかこのドラマ、と確信できたシーンがあるんです。パート1の第1話なんですが(会場にVTRが流れる)、道明寺がつくしのお弁当をぶちまけてしまう場面です。つくしが、地面に落ちたエビフライを見る。お弁当を作ってくれたお母さんの顔を思い出し、怒りがこみあげる。…そしてこの顔!!(キッと道明寺をにらむ、つくしの顔を指しながら)この顔見たときに、この子はすごいなと思って。視聴者の方は、次週も見たくなるんじゃないかな、と確信したんですよ。こうして、牧野つくしを中心に、道明寺らF4がまわりを固めてドラマが進む方程式が、しっかりできあがった感じがしたんですね」
監督の確信どおり、パート1は前述の通り大ヒットを記録。それを受けて制作されたパート2には、「前作より面白くする」という強い思いが込められていた。最終話のクライマックスの場面では、なんと武道館を貸し切り、一万二千人ものエキストラを集めた。
石井「どんなことでもNOと言わない、優秀なスタッフに囲まれていると、(満員の武道館、その真ん中に立つ道明寺とつくしのVTRを見て)こんな場面ができるんですよ。もう本当に異様な雰囲気で、役者さんも気持ちが乗っていました。このあと、花沢がつくしを抱き上げるんですが、このシーンは、僕は男なんですが、やってもらいたいなあ、なんてドキドキしましたね(笑)」
映画『花より男子ファイナル』にこめられた挑戦
こうして、パート2の放送を終え、瀬戸口氏と石井氏には、原作の『花より男子』の世界は描ききった実感があったという。それでも作り上げた、映画『花より男子ファイナル』の企画は、どのように立ち上げられたのだろうか。
瀬戸口「ホームページ等で、続編を望む熱烈な声があったんですけれど、一番慎重だったのは実は僕らでした。胸を張って続編をお送りできるようになるまではやらないと決めていたんです。で、打ち合わせを重ねて、この形ならいける! というのを見つけだし、今回の映画になったんです。ドラマを見ていない人や男の人も楽しめるよう、サスペンスやアクションの要素を入れました。主人公たちがアメリカ、香港など海外を飛び回る設定にしたので、『花より男子 ワールドツアー』っていうタイトルも考えました(笑)。ただ、不安も大きかったですね。パート1のときは、期待されていなかった分、気楽だったのですが、結果を出して当たり前になってきていたので。ライバルは自分たち自身でした」
学生時代はバックパッカーだったという石井監督。その経験ならではの思いが、映画にはしっかりと込められていた。
石井「日本の若い人たちに、世界を恐れないでほしい、と伝えたいんです。また、暗い事件があまりにも多いので、愛情の大切さも訴えたかった。テレビではなく、映画をやるんだ! という気負いは全くなかったですね。以前『クロサギ』という映画を撮ったとき、俳優の山崎努さんから『お前の映画をやれ』と言われたんですよ。映画だ映画だ、と騒いでいるのは映画屋だけだ、やりたいようにやれよ、と。それで楽になりましたね」
本年ナンバーワンの実写映画
宣伝活動も独特だった。主要キャストが、チャータージェットで日本の五大都市を回るイベントを行ったときは、各地で熱烈な歓迎を受けた。公開前日には、『花より男子・特別編』と題し、「花男」の世界に、主題歌を歌う嵐のメンバーが登場するドラマを放映した。このドラマも、タイトなスケジュールの撮影だったそうだが、パート1の頃から「花男」を支え続けるスタッフの面々は、「きつくなければ花男じゃない」と頑張りを見せた。そして、映画は6月28日に公開。前売り券の売り上げは、東宝史上最高となる24万枚を突破。現在までで約73億円の興行収入をあげている。映画のヒットについて、瀬戸口氏はこう語る。
瀬戸口「邦画で5億円を超える制作費の映画を、業界では特Aクラスと呼んでいますが、今回は制作・宣伝で10億円かかっています。通常なら、興行成績だけでその3倍いけば、もとは取れるといわれています。『花男』では、最低30億円はいかないとな、と思っていました。ちなみに日本では、年間で500本の映画が作られるそうですが、そのうち興行収入が20億円に達するものは、20本あるかないからしいです。このベスト20の興行収入を足したものが、映画界全体の9割から9割5分を占めるそうですね。実写では、50億円の興行収入を超える映画は、年にあるかないかだと言われています」
こうして、大ヒット作『花より男子』は、ついに有終の美を飾った。お話をうかがうことで、改めてこの実写版「花男」シリーズの面白さが明らかになったことと思う。それはまず何よりも、的確なキャスティングにある。原作のキャラクターに命を吹き込む、実力派の役者陣を揃えることができた。第2にストーリーの爽快感だ。牧野つくしが、道明寺らF4たちとの金銭的な「格差」を乗り越え、いじめられっ子から恋愛の対象に至るストーリーを、石井監督が「ヒットを確信した」という見事な演出力によって表現できた。さらに、パート2のラストにおける武道館のシーンや、映画におけるアメリカや香港などの海外ロケをはじめとする、派手なスペクタクル性も大事だった。F4たちのセレブ感に説得力を持たせるため、必然的に金銭的に負担のかかる作品となったが、瀬戸口プロデューサーをはじめスタッフの努力により、実現させることができた。これらの要因に加え、イケメンたちに囲まれるつくしの逆ハーレム状態の学園生活という設定の面白さも、女性からの人気に火をつけた要因だろう。この実写版『花より男子』シリーズは、間違いなく、日本のラブコメ史上に残る傑作だと言える。
最後に、将来プロデューサーや監督を目指す若者に向けて、メッセージをいただくことができた。
石井「普段からスタッフに言っていることですが、理想を持つのが大事かな、と思います。じつは学生のときに考えていた、何をやりたくて、どう伝えたいのかというようなことが、一番大事なんです。実際に働いて日常に追われると、ほとんどの人がそれを忘れます。10年20年先も覚えていると、楽しく仕事ができるんじゃないかなと思います」
瀬戸口「中学生のときに見た『男女7人夏物語』の、ハッピーエンドじゃないラストに衝撃を受けて、ドラマって凄いなと思ったんです。その思いが現在の仕事につながっているのが、幸せだなと思うんですが、大事なのは夢や情熱を強く持ち続けていることで、それが人を動かすんです。いろいろなスタッフの思いが詰まったものが作品なので、情熱だけは忘れないでいてほしいなあと思います」
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