2006年12月26日火曜日

interview

王子様でもない、二次元でもない男であるということ
  Date: 2006.12.26.
  From: 装苑 62巻2号
  By: Yuka Kimbara
  URL: http://books.bunka.ac.jp/np/isbn/01335022007/


現在、日本のみならず、アジア中の少女からその母親世代にまで、彼女たちの求める理想の王子様像をある意味、背負い、体現しているのがジャニーズ事務所のタレントたちである。

「けどね」と松本潤はいう。

「男である以上、王子様でいられるわきゃないんですよ」

そう、王子様だって生物学的に男である以上、性欲も持っているという当たり前のことをちゃんと感じさせて、演じる男。それが松本潤の凄さだ。思い出してみてほしい。テレビドラマ「君はきみはペット」でも映画「東京タワー」でも、彼はただ美しいだけの男の子ではなかった。初の主演映画「僕は妹に恋をする」では、双子の妹と精神だけでなく、肉体的にも強く結びつくことを望む高校生を演じている。アンモラルな設定が登場人物にも、映画を見守る観客にも大きな揺さぶりをかけ、自分の気持ちに正直であろうとすればするほどもがく松本潤の不穏な佇まいがスクリーン全体を支配する。こんな危険な映画、いたいけな少女たちに見せていいのか!?(いや、いいのだ。断固として)

「原作の少女コミックは兄妹のセックスについて真っ向から描いていて、その関係性を否定して物語を作ると、それこそ僕の演じる頼という少年は郁という妹にとって、ただの王子様になっちゃう。リアリティがないドラマにするくらいなら、二次元のままでいいわけで、そこを映画にするために、僕は、原作があえて描いていた部分を生身の男として演じようと思ったんです。もしかしたら、嵐の松本潤に興味を持って見に来てくれる人たちの中には、この映画の僕の演技によって、心にしこりを残す人がいるかもしれないし、不快に感じる人が出てくるかもしれない。嫌いなら徹底的に嫌われてもいい。けれど、僕としては、この映画で人を好きになるということに対して、極限にまで削ぎ落とした感情を出し切ったという感触がある。いい意味で、僕のファンも、コミックのファンも、裏切っていると信じたい」

監督は魚喃キリコの原作を映画化した「blue」に継いで、少女漫画の世界に分け入った安藤尋。この人の映像スタイルはとても独特で、もう、これ以上耐えられないというほどの沈黙もものともしない長回しで知られる。冒頭、松本潤が榮倉奈々に積年の想いを打ち明け、自分を選ぶかどうかを迫る10分間の攻防の場面は、二人のためらいと吐息と熱情と、あらゆる微妙な感情すべてがカメラに封じ込められていて、この映画を受け入れるかどうかの踏み絵となっている。その名場面をはじめ、全編、松本潤は大人になる一歩手前の少年の、エゴイスティックなまでのまっすぐな愛の感情やプライド、欲望を炸裂させ、生易しくない等身大の男の子像を見せつける。この人の挑発的なまでに女子の心をざわつかせる正体はなんなのだろう?

「やっぱり、自分も揺れているということなんじゃないでしょうか。僕の中に負の要素がいっぱいあって、だからこそ、生きていく中でエネルギーを放出して、じたばたするキャラクターに惹かれるんだと思う。だから、いい職業についたと思います。自分の力だけでは発散できないものがいっぱいあるけど、それを、他の人の人生を借りて、生きることで、叫んだり、悶絶したり、ぶつけたりできるから。『僕は妹に恋をする』の頼役もまさにそうで、安藤監督には僕の心の揺れを全部、写し取られた気がする。いろんなものが残った作品になっていますね」

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