『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』松本潤
ありのままの松潤 in LA ノーカット・インタビュー
Date: 2008.05.04.
From: http://www.varietyjapan.com/
URL: http://www.varietyjapan.com/interview/2k1u7d00000150kc.html
黒澤明監督の傑作時代劇『隠し砦の三悪人』をリメイクした東宝映画『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』に主演する松本潤。役者としてのキャリアは決して長くはないが、その演技力は高く評価されている。初の時代劇で、黒澤作品のリメイク版に主演、という新たな挑戦を終えた彼に、映画のこと、仕事への取り組み方、そして本人の生の姿について聞いてみた。松潤は、ひと言ひと言、大切に自分の言葉を選びながら、真摯にインタビューに答えてくれた。その誠実な姿を、ノーカット・インタビューでLAからお届けする。
『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』——戦国時代を舞台に、2人の平民と1人の武士が、生き残った一国の姫を連れて他国に逃亡するまでを描くアクション時代劇。松本潤は、平民の1人、武蔵(たけぞう)を演じている。
いろいろな映画のいいところが混ざり合っていてびっくりしました
全編ごらんになりましたか?
松本潤(以下、松潤) はい。びっくりしました。自分でも。ここまでアクション・エンタテインメントとして、ダイナミックで、ハリウッドにも負けないつくりのものが出来上がったことに驚きました。
心は日本ですが、スタイルがダイナミックでハリウッド的。
松潤 そうですね。すごくいろんなエッセンスが入ってて……。50年前に黒澤明監督が撮られた『隠し砦の三悪人』があって、そのいいところとか、この50年間で進んだ日本の技術とか、プラス、ハリウッド大作のエッセンスとか、そういういろいろな映画のいいところが混ざり合って出来た映画だなと思うんです。
楽しみにされてたシーンは?
松潤 後半です。後半はCGが多かったので、(完成形が)どうなるのか、どういうものなのかわからないでやっていたので。こういう感じで、という説明だけ受けて、うーん、と思いながら。出来上がったのを見たら「す、すごいな……」みたいな。
オリジナルはごらんになりました?
松潤 観ました。すっごく面白かったです。DVDは持ってたんですけど、敷居が高い感じがあって観てなかったんです。時代劇だということもありますし、“黒澤監督の作品”というのが、すごく難しくて頭使わなきゃ観られないような。逆にそれを観てつまんないと思っちゃったら、そう思う自分が “いけてない”みたいな(笑)。“世界で絶賛されてる世界のクロサワをおまえわかんないの?”みたいになるのが怖くて(笑)、やっぱ、ちょっと自分が少し映画っていうものをわかってから観たほうがいいんじゃないかと思ってたんです。まあやるにあたって観ないのも失礼な話だと思って観たら、ぜんぜん敷居は高くないし、誰にでもわかるエンタテインメント。なんかこう、家の中をスキップして歩きたくなるような感じっていうか、それぐらいなんか爽快だし、疾走感あるし、エンタテインメントってこういうことだな、みたいな。
ヒーローでない、悪そうなところが魅力的な役だったんです
武蔵という役はオリジナルにはありませんが、正直、映画を拝見する前は、松本さんがこの役をやられるということを意外に感じていました。
松潤 へえ〜。
でも映画を観てみると、この役はすごく面白くて、映画全体をオーケストラに例えるなら、武蔵はヴィオラというか……、バイオリンではない。もっと重厚なハーモニーを担うところにある、とても重要な役だと思いました。オファーされたときはどういうふうに思われましたか?
松潤 自分がヴィオラかどうかということですか?(笑)
武蔵役についてです(笑)。武蔵という役柄はいわゆるヒーローではなく、物語を通してだんだん成長していく、その人間性が面白い役どころ。この役を自分が演じるということをどう思われたんでしょうか?
松潤 あんまりヒーロー、ヒーローしてないところが僕は魅力だと思うんですよね。もちろん後半ヒーローになるんですけど、なんかこう汚い感じというか、粗雑な感じっていうか。そういうキャラクターがすごく魅力的だった。簡単な言葉でいうと “悪そう”みたいな……。どっちかっつーと悪いやつだというところにすごく興味を惹かれたし、荒れた状態から少しずつ変わっていくのが面白いなと。最初からまっすぐヒーローになる素質を感じさせてしまう役だと面白味がない気がするし。まあその逆算で前半は好きなことができるというのもありますし。
ハリウッドの俳優はよく歩き方から役作りにはいるといいますが、松本さんもずっと腰をかがめて姿勢から役に入り込んでいた感じがしました。どういう感じの役作りをされましたか?
松潤 うーん、まあ時代劇なので時代背景を知るために、いろいろな本を読んだり……。
例えばどういう本を読まれたんですか?
松潤 なんていうタイトルだっけ? なんか金を掘る仕事をしてる人たちがどういうことをやってたか、その時代の雑兵の本性みたいなものが書いてある本。戦(いくさ)があるからって集められてもみんな戦わない。死にたくないし、自分が戦わなくてもなにも変わらないから、ただ付いていくだけ。また、その付いていくのも適当で、その辺で死んでる人がいたら、(身ぐるみ)はがして……。というようなことが書いてあって、へー、みたいな。まあ、そうだよな。俺だったら確かに自分が出世する可能性がないんだったら、絶対に本気でやんないよな、と。
まあ、生きるためということですよね。
松潤 うーん。ねぇ、それこそ今まで見てきた時代劇って、『ラスト サムライ』なんかもそうですが、対決する瞬間、全員がテンション上がってるじゃないですか。そうじゃねえんだな……と(笑)。それって作られた、絵的な事情とかを含めたものなんだなあと思いました。
自分のブランドイメージなんて、まったく思ってないです
いわゆるヒーローじゃない役をやられたのは、いままでの松本さんの作り上げてきたブランドイメージを崩すという意味、もしくはそこは関係なく役者として興味のある役をやっていきたい、どちらの考えからたどり着いたものですか?
松潤 ブランドイメージなんて僕はまったく考えてないですし、あるとするならこれから作るもので、まだ確立されたものがあるとは思ってないですけど。でもいろいろなことをやるなかで……芝居だけじゃなく、アイドルだったり、嵐っていうグループだったりというなかでのざっくりとしたイメージっていうか、形みたいなのはあると思うんですけど、芝居に関していうと、結局いろんな役をやったうえで行きつくことが大事なのかなと思います。芝居のキャリアはぜんぜんないに等しいくらいで数本しかやってないですから……。うーん、まあ、数で勝負するわけじゃないので、いい作品だったり、いいスタッフだったり、いい共演者の人に巡りあえて、面白い作品を作る、いちスタッフになれればいいなと思うんですけど。
そういう意味で、今回の映画で影響を受けたことはありますか?
松潤 そうですねえ。今回もすごくステキなことがありましたね。才能溢れる方々と一緒にできましたし、すごい熱のある現場だったので。
ご自分でも演出とか構成といったものを時々なされて、すごく興味を持ってそういうところを見てらっしゃるんじゃないかと思いますが、樋口(真嗣)監督のことで現場ですごいな、と思ったところとかはありますか?
松潤 僕自身が言われてたわけじゃないんですけど、樋口さんはすごい熱い方なので、役者さんにこういうふうにしてほしいっていうのを自分でやられたりするんですよ。こうやって倒れてほしいとか、こう体勢を変えてほしいっていうときに、膝打ってそのまま倒れたり。ちょっとびっくりしました。やるんだ……みたいな(笑)。やんなくていいのに……って(笑)。
松本さんには演技指導的なものはなかったんですか?
松潤 僕はほとんどなかったですね。なんかあったかな? ほとんどなかったですかね。実際の現場ではほとんどなくて、(クランク)インする前に脚本(ホン)のこととか、役のこととかで、3、4回話しをして、お互い共通の認識を持った上で現場に入れたので、あまり演技指導的なものはなかったですね。
逆に松本さんの方からアイデアを出した部分とかはありますか?
松潤 なんだろう? うーん。いや、なんかあったのかもしれないですけど、なかったのかもしれない。自分は作品の中のただのひとコマでしかないと思うから、誰がなにを言ったとかいうのは、さほど重要ではないように思います。
でも思ったことは言う。
松潤 結構言います。もちろん相手に敬意を表した上で、自分はこういうふうに思うけど、どうかと。それにこだわり過ぎるわけではなく、まあそれで面白くなるんだったら、その上で自分はどう思うかっていうのを伝えるのはありじゃないかなと思います。
リアルな部分とスーパーマン的なイメージを揺らしながらやる感じ
後半のロマンスの部分は、これまでの時代劇にはなかったものではないかと思いますし、ある意味、殻を破られてる感じがするんですが、その辺について、現場ではどのような話し合いがあったのでしょうか?
松潤 現場というと?
例えば、松本さんはロマンスの場面をすんなり受け入れられましたか? 金を掘っていた人たちのことなどいろいろ研究された上で臨まれたわけですが、もちろん人間同士のつながりとしてあって当然だと思うんですが、お姫さまと平民の男の心のつながりを描写するのは時代劇だとかなり難しかったのではないかと思いました。
松潤 そうですね。(この映画は)そこぐらいからちょっとずつ変わっていくんです。エンタテインメントの方に走っていくというか。そこまでは逆にすごくリアル、時代考証とかもした上でちゃんと背景とか全部作り込んで見せていく。それがボロボロのやつと姫が(笑)!? っていうところから夢がスタートというか、現実から離れていく。だから、あり、だと、結構すんなり。逆にそこ突っかかっちゃうとたぶん出来ないと思うんで。その辺から徐々にグラグラするっていうか。すごくリアリティを持ってやらないといけない現実と、ヒーローっていうか、スーパーマン的なイメージっていうか、そのふたつを揺らしながらやる感じかなあと思ってたんで。
確かにここで武蔵の成長がありますね。他人を守る気持ちが芽生えてきて、自分の欲を捨てて、ヒーローになっていく。あの姿は、あのロマンスがあるからこそ伝わるところでもあります。松本さんがそういう部分を大きな人間像として描いていらっしゃるなと感じたんですけど。
松潤 (照れながら)ありがとうございます(笑)。
松本さんのファンの方々は10代から20代が中心になるのかもしれませんが、そういった方たちに時代劇を観ていただくいい機会なのではないかと思いますが。
松潤 まあ、時代劇ではあるとは思うんで、それ自体は否定しないです。ただ僕のなかでは、この映画を観に行くというのは、時代劇を観に行くというよりも、『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか『ロード・オブ・ザ・リング』とかを観に行くほうに近いような気がするんです。
『ロード・オブ・ザ・リング』の方に。
松潤 もちろん時代劇ではあるんだけど、時代劇っていうより、アクション・エンタテインメントっていうジャンルの方がより近いんではないかと。ま、そういう意味では、時代劇だからって気後れすることなく観られる映画だと思います。時代劇入門編としてはすごくわかりやすい。いや、もっと言えば、時代劇の入門編にもならないくらい時代劇感はないですから(笑)。絶対に誰しもがわかる、すごくわかりやすい作品になってると思います。
「完璧主義」? うん。今まではそうだったかも
松本さんご自身のことについて、よくいろいろな方が「完璧主義」という感じで表現されていますが、ご自分ではどう思われますか?
松潤 うん。最近気づいたんですけど、まあ、今まではそうだったかも。うーん。完璧主義だとは思わないですけど……細かい(笑)。
プライベートにおいても細かい?
松潤 私生活は細かくないと思いますけどね。他の人からしたら細かいかも知れないですけど、自分では細かいともちろん思わないですし。そうですね、ただ結構、細部は気にしがちでしたね。
でした、というと?
松潤 いや、なんかもういいかなって、最近思うんですよね。ま、と言いつつたぶん人並みには絶対気にはなると思うんですけど。
もういいかなと思わせるようなことがあったんですか?
松潤 ここ2本映画を立て続けに撮って——まだ両方とも公開されてないですけど——、それで思いました。今までやってきたことはなんかもう、決め決めに、こういうものが出来るっていうのを計算した上でやってきたんですけど、自分の頭のなかで想像できることは限られているので、そうすると表現できる幅も狭くなるわけですよ。そして狭いけど、自分の頭のなかにあるものはとりあえず全部やってみた。だから、これ以上やってももう何も出てこねえかな、みたいな。
じゃあ、ほかの場所から出てくるものを楽しみたい?
松潤 うーん、なんかこう、なんていうんですかね、人に乗っかってやってみて、「あぁ、ぜんっぜん出来なかった……」みたいな(笑)。そういう状態もいいんじゃないかと。
ハリウッドは、機会があれば経験してみたいですね
最後に、今後、ハリウッドに挑戦してみようという気持ちはおありでしょうか?
松潤 まあでも、機会があれば、っていう感じですけどね。ハリウッド目指してやってきたわけじゃないし、ハリウッド映画に出れば終わりかっていうとそういうわけでもないので、機会があれば……。うーん、海外のスタイルとか、そういうものがどうなってるのかすごく気になるし、そういう意味でも経験はしたいなと思います。お金の掛け方とか、ぜんぜん日本とは違うだろうし、その世界も見たいなとは思いますね。ただ……まあいいや。
それがゴールではない、と。
松潤 そうですね。なめた言い方に聞こえるかもしれないけど。でも、まあ出たいのは事実です。そういうチャンスがあれば、そんな大きなバジェットのなかで、自分が仕事することはすごく楽しいだろうし、経験はしてみたいですね。機会があれば。
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