2008年5月1日木曜日

review

黒澤活劇 やんちゃにリメーク 「隠し砦の三悪人」
  Date: 2008.05.01.
  From: 朝日新聞
  By: 野波健祐
  URL: http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200805010171.html


 黒澤明作品をリメークした「隠し砦(とりで)の三悪人」が10日から公開される。監督は「日本沈没」に続いて大作に挑んだ樋口真嗣。人物の魅力を前面に出し、邦画屈指の冒険活劇を大胆に再構築した。「見る人に考える間を与えないような疾走感を追い求めた」と語る。

 「最高に面白い映画をみんなに見せてやろう」

 台本の最初に、そう書き込んだ樋口監督。オリジナルにある「作り手のやんちゃな心意気」を再現したかったという。半世紀前、黒澤は「生きる」「七人の侍」ですでに名声を確立していた。「功なり名を遂げた人が、ただ観客を喜ばせようと破天荒な活劇に挑んだ。そんな若々しさを継ぎたかった」

 時は戦国、秋月家の再興を期し、六郎太(阿部寛)は雪姫(長澤まさみ)を連れ、隠し金とともに同盟国に逃げようとする。ところが貧しい民の武蔵(松本潤)と新八(宮川大輔)に隠し金を見つかったからややこしくなり……。

 身分も思惑も異なる者同士の逃走劇という大枠は変えていない。とはいえ「オリジナルを細かく裂き、使える要素だけを並べ直した」という通り、筋運びはかなり異なる。

 まずは主役。前作は三船敏郎演じる六郎太の存在が群を抜いていたが、今回は金掘りの武蔵が主人公。六郎太の好敵手だった誠実な侍は、野心に満ちた徹頭徹尾の敵役となった。このため名セリフ「裏切り御免(ごめん)」は意外な場面に再配置された。

 脚色は「劇団☆新感線」の座付き作家で、活劇作りに定評ある中島かずき。武士の視点が勝る黒澤版に比して、民衆賛歌の趣となっている。

 「侍の苦悩は正直わからないし、私は庶民として自由な生き方を望んでいる。でも自由を阻害する者はどの時代にもいる。それが国なのか偉いやつなのか分からないが、そのいらだちを伝えたかった」

 特撮にたけた監督だが、今回はあえて抑えめにした。「地に足のついたアクションにしたかった。スタントを使うような演技でも、役者は果敢に取り組んでくれた。演出が追いつかず、撮影中、黒澤先輩!教えて下さい、とばかりに、何度も原作を見直した。人物を、こいつら、おもしれえやつだなあ、と思わせる動かし方は絶品です」

 新作でも、登場人物は自らの使命に、欲望に添い、「やんちゃに」動き回る。前作を知る人も、時代劇と思って初めて見る人も、最後に監督の高笑いが聞こえるに違いない。

 「裏切り御免!」と。

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