2008年5月8日木曜日

review

『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』
時代劇から冒険活劇へ!
黒澤作品50年ぶりのリメイク

  Date: 2008.05.08.
  From: http://trendy.nikkeibp.co.jp/
  By: 安部偲
  URL: http://trendy.nikkeibp.co.jp/lc/movie/080508_kakushi-toride/


 黒澤明の名作『隠し砦の三悪人』が、昨年暮れに公開された『椿三十郎』に続きリメイクされた。今回メガホンを取ったのは、『ローレライ』『日本沈没』を大ヒットさせた樋口真嗣監督。メインキャストは、松本潤、長澤まさみ、宮川大輔、阿部寛といった顔ぶれ。かつて、三船敏郎、千秋実、藤原釜足といった黒澤組には欠かせない名優たちが挑んだこの映画が、今風のキャスティングでどのように変わったのか? そのポイントを、公開より一足先にレポートしよう。

 まずは物語から。時は戦国。とある地方に、早川、秋月、山名という、国境を接する3つの国があった。その中の一国・山名は、覇権拡大に野心を燃やし、隣接する大国・早川攻略の足がかりとして、まずは小国の秋月に攻め入り、ほどなく陥落させてしまう。

 勢いに乗った山名の軍勢が、真っ先に着手したのが秋月の軍資金探し。領内のどこかに「黄金百貫」が隠されているはず。これさえ獲得すれば、早川攻略はすぐ目の前だ。そのために大勢の民が捕らえられ、過酷な労役を強いられていた。金堀り師の武蔵(松本潤)と木こりの新八(宮川大輔)も、同様に労役を強いられていたが、機転を利かして脱走。その道中、秋月の軍資金の一部を発見する。

 大喜びする2人だったが、2人組の野武士に捕まってしまう。だが、彼らこそ、山名の軍勢に見つからずに軍資金を早川に持ち込み、秋月を再興させるという希望を託された、秋月の侍大将・真壁六郎太(阿部寛)と秋月の姫君・雪姫(長澤まさみ)であった──。

 物語はここからが本番だ。六郎太に斬られたくない一心で、軍資金を早川まで届ける奇策を提案した武蔵は、そのまま、新八とともに、六郎太と雪姫が目指す旅の手助けをすることに。だが、そううまくはことが運ばない。4人の行く手には、幾多の試練が待ち受けているのだ。


リメイク版では脚本を大幅に変更

 黒澤版の『隠し砦の三悪人』が誕生したのが1958年のこと。半世紀前の映画のリメイクに当たって、まず変わったのが脚本だ。『椿三十郎』のリメイクでは、当時の脚本をそのまま使ったことが話題になったが、こちらは「劇団☆新感線」の座付作家・中島かずきを脚色に迎え、大胆にアレンジ。黒澤版では六郎太を演じた三船敏郎が主人公として描かれていたが、本作では松本潤扮する武蔵へと変わっている。

 切り口を変えた理由の1つが、侍でなく平民の視点で描いた方が、より観客目線に近くなるのではないかという考えだ。同様に変わったのが、千秋実と藤原釜足が演じた百姓コンビのキャラ。本作のメインである武蔵と新八は、黒澤版とは違うキャラで圧倒的に若い設定。こちらも若者目線の物語に変えることで、観客の共感を狙ったという。

 また、黒澤版のファンならご存じの名ゼリフ「裏切り御免!」は今回も踏襲されているものの、それを口にする人物も変わっている。全体として、黒澤版に敬意を持ち、そのエッセンスを残しながらも、単なるリメイクではなく、今この時代だからこそ可能な技術や、テレビやインターネットがあるこの時代に観客に見てもらうとは、どういうことかを考えた作りになっているのだ。

 そんな野心作である一方で、遊び心も忘れない。その1つが、『スター・ウォーズ』へのオマージュ。『隠し砦の三悪人』が『スター・ウォーズ』誕生のきっかけになったことは有名だが、逆に本作では、椎名桔平扮する悪役の鎧甲に、監督から『スター・ウォーズ』へのオマージュが捧げられている。

 テンポもアップし、黒澤版とは違ったアプローチで作られた本作。それは、半世紀という時を超えたことで、時代劇という佇まいから、『インディ・ジョーンズ』のようなアクションアドベンチャーへとチェンジした現れだ。その変貌に戸惑う観客もいるかも知れない。だが、面白い作品を作りたいという映画人としてのスピリットは、この作品にも脈々と受け継がれている。

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