黒澤映画のリメイク版『隠し砦の三悪人』は過去を踏襲しない手法で成功できるのか!!
Date: 2008.05.09.
From: http://trendy.nikkeibp.co.jp/
By: 小山田裕哉
URL: http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20080509/1010610/
最近、黒澤明作品のリメイクが続いている。昨年の9月にテレビ朝日でドラマとして放送された『天国と地獄』と『生きる』。続いて、森田芳光が監督を務め、織田裕二が主演をした映画『椿三十郎』(2007年)と去年だけでも3作品がリメイクされている。そして今年の5月10日に公開する『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』はリメイク4作目となる。
これまでリメイクされてきた3作品は、基本的には原作(黒澤監督作品)に忠実だった。しかし、本作はかなり大胆に脚本を改変している。
原作の持つ「姫と黄金を守り、敵陣を突破する」という、後にジョージ・ルーカス監督の『スターウォーズ』に影響を与えた物語の構造は変わらないが、庶民と侍の間に存在する階級差、権力への疑念などといった社会問題を意識して作った黒澤作品の要素はほとんどなくなっている。今回の作品は監督の樋口真嗣が台本に掲げた「最高に面白い映画をみんなに見せてやろう」という宣言に見られるように、冒険活劇のエンタテインメイントに仕上がっている。
特に主人公の設定にはそれが表れている。原作では中年の農民2人だが、今回は金掘り師の武蔵(松本潤)という、少年に近いキャラクターに変わっている。それにより、原作にはない雪姫(長澤まさみ)との“恋愛”というファクターが導入されている。多様な観客層を得るために、美男美女による恋愛は不可欠という製作サイドの判断が感じられる。
確かに原作の農民2人では、風貌からして姫と不釣り合いであり、恋愛の発生する余地はない。その代わり、原作には『スターウォーズ』の「C-3PO」と「R2D2」のモデルにもなった2人のやりとりと、仏頂面で姫を守る武将の真壁六郎太(旧作では三船俊郎。今回は阿部寛)が見事に対比しており、緊張感のある作品にコミカルな要素を付与していた。また、農民と姫たちが決して交わらないからこそ、社会にはびこる「階級」という問題をあぶり出していた。今回は、武蔵とともに行動する木こりの新八(宮川大輔)にその役目が引き継がれているが、1人だけ浮いている印象を受ける。
肝心のアクションだが、『ローレライ』(2005年)や『日本沈没』(2006年)を監督した樋口真嗣らしく、CGを生かした映像になっており、強いインパクトがある。ただ、そのために実写でありながらアニメのような雰囲気もある。
黒澤作品のリメイクは、原作のや知名度が高く、イメージがあまりにも強いため困難なケースが多い。昨年の『椿三十郎』は、カット割りや遠近法に至るまで、原作を忠実にリメイクしたために、かえってオリジナル感に欠け、興行的にふるわなかった例だと言える。
本作は「恋愛」というファクターを新たに導入し、冒険活劇の要素を加えた樋口真嗣版『隠し砦の三悪人』と言えるだろう。大胆な改変を施したことで、原作とは異なる幅広い層に向けた作品となっている。原作を見ていない人はもちろん、見た人も初めて見る感覚を持つはずだ。新たな要素を加え、過去の作品を超えることができるのか、非常に注目である。
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