2008年5月7日水曜日

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世界から熱いまなざし!「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」
日本外国特派員協会記者会見

  Date: 2008.05.
  From: http://www.toho.co.jp/
  URL: http://www.toho.co.jp/movienews/0805/01kakusitoride_tk.html


映画史上に残る「スター・ウォーズ」シリーズの誕生に多大な影響を与えたとされる、黒澤明監督の傑作を大胆に脚色してリメイクした「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」。先週行われたロサンゼルスのプレミア試写会でも好評を博し、大きな注目を集めていることから、日本外国特派員協会から招待を受け、5月7日、東京・有楽町の同協会にて、樋口真嗣監督と山内章弘プロデューサーが記者会見を行いました。

記者の皆さんからの率直な感想や質問の数々に、思わぬ裏話まで飛び出した記者会見。真摯に答える樋口監督と山内プロデューサーに、最後は温かい拍手が送られました。その模様をレポート致します。




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【 記者会見 (挨拶順) 】

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樋口真嗣監督

Thank you for coming.後は日本語でお話させてください(笑)。私が50年前に作られた黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」と出会ったのは、高校に入ったぐらいの頃だったと思います。それからさかのぼること3年ぐらい前になるんですが、「アメリカからすごい映画がやってくる」という噂がありまして、宇宙を舞台に侍が光の剣で戦うという映画でした。その時にクラスメイトたちは、「やっぱりアメリカはすごいよな。日本じゃこういう映画は作れないよな」と言っていました。

ところが、その映画は実は日本のある映画を元に作られたということを聞いて、その映画を見たのが高校生の時だったのです。クラスメイトは「やっぱりアメリカの方がすごいじゃないか」と言っていたので、僕は「日本もまだすごい映画を作っていたんだ!」と言い返したかったんですが、クラスメートは皆バラバラの高校に行ってしまったので、誰にも反論することができませんでした。

それから何十年かが経って、まさか自分がその映画をリメイクすることになるとは、その頃は想像もしていませんでした。今、この映画を作るということには大きなプレッシャーを感じていました。でも、何よりも勇気付けられたのは、50年前にアメリカにも負けない冒険映画を日本で作っていたという事実です。「今、我々が出来ることは何か」を考えながらこの映画を作りました。むしろ、皆さんにどう見ていただけたのか、こちらが伺いたいです。                     


山内章弘プロデューサー

日本の映画というのは、長らく景気の良くない産業だと言われていたんですが、それがここ数年ようやく元気になってきたと言われるようになりました。その中で、規模や技術的な面で、いわゆる冒険活劇というのが作れない時代が長く続いていたんですけれども、こういうものを日本発でチャレンジしたいということで、製作することになりました。

老若男女、どんな世代にも、劇場を出た時に「あぁ、面白かった」と言ってもらえるような映画を目指したので、皆さんのご意見を伺いたいと思っております。





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【 質疑応答 】

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Q:黒澤監督の作品をリメイクするのに、恐れをなしたりはしませんでしたか?

樋口監督:
最終的にはなかったですね。

Q:「最終的に……」ということは、最初はどうだったんでしょうか?

樋口監督:
会議室から逃げ出したくなりました(笑)。ただ、これは私のいつもの悪い癖なんですけれども、その瞬間にちょっとしたアイデアが浮かんでしまうんです。それは、「スター・ウォーズ」を見た後に、「隠し砦の三悪人」を見てしまったが故のストレスというものが、当時、高校生の頃にあったんですね。「デス・スターはどこだ?」と。そう言えば、お分かりいただけると思います。

MC:日本の監督は、低予算、かつ短期間で映画を作ることで知られていますが、樋口監督はいかがですか?

樋口監督:
頑張りました(笑)。


MC:この映画の予算はいくらで、どのぐらいの期間、撮影を行ったんですか?

樋口監督:
これ以上お話すると、私は彼(甲冑姿の侍)に切られてしまうかも(笑)。たぶん、プロデューサーが的確な答えをしてくれると思います。

山内プロデューサー:
総予算は15億円です。撮影日数は概ね2カ月間でした。

樋口監督:
しかも、撮影を行ったのが11月から12月と、日本で最も日の当たる時間が短い時期だったので大変でした。でもそのおかげでアメリカ映画的な手法を採らせていただきまして、常に2チームで回していました。だから、俳優はその間を行ったり来たり、大変だったと思います。俳優の集中力に感謝しています。

Q:黒澤作品を見ていない観客に、黒澤作品も見てもらいたいと思いますか?

樋口監督:
見ていない方にはぜひ見てもらいたいと思います。通常、このような作品を作る時には、やはり影響を受けてしまいそうな気がするので、元になった映画を見ることはしないんですね。でも、今回は困難にぶつかった時に、黒澤さんの映画を見てすごく勇気をもらいました。もちろん、独立した作品として見ても楽しめると思いますが、例えば私の作品を見た後に黒澤さんの作品を見ると、より楽しめるようになっていると思います。

Q:50年前にはCGがありませんでしたね。今回の映画には、どれだけのCGが使われているのでしょうか? 特に、CGで我々を騙した部分があったら、そのヒントを教えてください(会場笑)。

樋口監督:
50年前と今とで決定的に違うのは、東京から車で2時間行った所で時代劇が撮れるか撮れないかということだと思います。時代劇に適した風景が、今はどんどん失われていっています。「いいなぁ」と思った風景があったとしても、その山の上には携帯電話のアンテナがボンッと立っているんです(会場笑)。それを消すのに、CGを使いました。

Q:4人の主人公たちのその後が気になるのですが……。

樋口監督:
その後の4人の生活については、実際に演じていた松本潤くんたちとも話し合っておりまして、後はそれをプロデューサーにどうやってぶつけようかという段階にきております(会場笑)。皆さんの活字の力で、ぜひ実現に向けていただければ……(笑)。

Q:戦国時代の人々の色々な側面が描かれていましたが、監督の思い入れがあれば聞かせてください。

樋口監督:
日本の戦国時代は今から400年から500年前のことですが、それと同じことが今も世界中のあちこちで起きています。刀や鎧が、自動小銃や地雷に変わっただけで、まったく同じことが同じ民族の中で起きているんです。そういった中で、我々はそれを乗り超えた国で安心して暮らしているけれども、他者を傷つけることで支配する愚かしさというのを、私としては訴えたかったんです。

本作は決して時代劇という過去の話ではなくて、現代にも当てはまる話だと思っています。それとは別の次元で、私も監督という人の上に立つ人間なので、まとめていくという作業の大変さは強く知っていると思っています。そういった中で、「どうすれば理想的なリーダーになれるのか」といった思い入れを、侍の立場の人たちにぶつけていきました。どちらも簡単に答えの出せるような問題ではないんですけれども、自分の中の理想を映画の中の人物に託してみました。

Q:今日の上映では英語字幕がついていましたが、公開の際にはつかないと聞きました。つけた方が良いのでは?

樋口監督:
素晴らしい翻訳でした。字幕があることによって、この東京に住んでいる外国人のお客さんも見に来やすくなるということですよね。

Q:外国人のお客さんだけではなく、英語を学ぶ中学生、高校生などにとっても勉強になると思うのですが。

樋口監督:
どうでしょう、山内さん。

山内プロデューサー:
貴重なご意見をありがとうございます。字幕に関しては、なるべく平易な言葉を使って伝えるようにと作業を進めていたので、非常にありがたいお言葉をいただけたと思っています。ただ、現状としましては、英語字幕版の公開は検討していないんです。今、貴重なご意見をいただきましたので、ぜひ持ち帰って考えてみたいと思います。ありがとうございます。

樋口監督:
昔の日本映画というのは、非常に録音の状態が悪いので、何と言っているのかセリフが分からないことが多々あるんですね。分かりづらいセリフを英語字幕で補うことで、私は英語字幕によって黒澤作品を理解したということを、今、思い出しました(笑)。残念なことは、黒澤作品を理解することは出来たものの、英語を覚えることは出来なかったということですね(会場笑)。

Q:黒澤作品の中で、私が一番気持ちが良かったセリフは「裏切り御免」というものでした。ところが、樋口作品では、全然違う場面で、それも2回使われていました。監督にとって、あのセリフはどんな意味を持っていたのでしょうか?

樋口監督:
まさにあなたのようなお客さんのために、私はあのセリフを2度使ったんです(会場笑)。黒澤監督の映画の中で、最も印象的で、最も感動的なセリフだと思いましたので、おそらく前作を見ている方は「あのセリフはどこで出てくるのだろう?」と思うと思ったんです。そういうお客さんに向けて私は、「裏切り御免」と言いたかったんですね(会場笑)。

Q:海外でどのように受け入れられることを期待していますか?

樋口監督:
先週、ロサンゼルスでレビューをしてきたんですが、私と松本くんはどうしても彼らの反応が気になるので、挨拶が終わって控え室に戻ってから、こっそりと劇場に戻ったんですね。というのも、挨拶が終わってそのまま着席してしまうと、そこにいることが分かってしまうので、一旦下がってから潜りこんだんです。非常にリアルな反応が楽しめました。

宮川大輔さんが演じる新八が出てくる度に、なぜか客席から笑い声が漏れて、そのうち何かをするたびにドッカンドッカン笑いが起きて、2人が揉める度に笑いが巻き起こるんですね。日本の試写会ですと、皆さん静かに見てらっしゃるので、それは今までにない反応で新鮮でした。しかも、自分たちが「面白いだろう」と思っていることに対して素直に反応してくれるので、僕たちは「作って良かったな」と思いました。

しかし、その上映の最中に取材が入っていたので、僕たちはそこから抜け出さなきゃならなくなりました。でも、どうしても関所の場面の反応を見たかったので、お願いして時間をずらしてもらって見届けました。関所に出てくるゲイの侍の反応を1番見たかったんです。非常に良い反応が返ってきて、安心しました(笑)。

Q:黒澤監督のオリジナル版が作られてちょうど50年ですが、50周年企画の意味合いもあったのでしょうか?

山内プロデューサー:
黒澤作品のリメイクが続いているという印象をお持ちかと思いますが、実は我々のリメイクの企画が進み始めたのは、2004年に原作権をお預かりしてからですので、最近の「椿三十郎」ですとか、テレビの「天国と地獄」などの企画が進むよりも前からのものになります。ですので、この一連の流れとは別に、作品単独のものとして走り始めましたので、記念事業的な捉え方はしておりません。

Q:オリジナルでもコメディアンが出演したりしていましたが、今回のキャスティングの意図は?

樋口監督:
あまりやりすぎるとモノマネ大会になってしまうので、モノマネではなく、今回我々が作ったストーリーに基づいてキャスティングを行いました。ですから、前作の六郎太を演じる三船敏郎さんのようなキャストを探した訳ではありませんし、あくまでも、今作るに当たって「強そうに見える侍は誰だ?」とキャスティングしました。

ただ、1つ気をつけたのは、意図的に侍を大きくして、侍以外を小さくしたということです。長澤まさみさんも身長が高い方ですから、それに対して山の民である武蔵たちは、実際にそんなに背が低い訳ではないんですけれども、低く見えるように、なるべく背中を丸めてがに股で小さく見えるように演じてもらいました。そうすることで、身分の差を視覚的に見えるようにしました。これは「ロード・オブ・ザ・リング」から学んだことです(会場笑)。

それと、俳優さんを選ぶ時に非常に注意したことは、「それぞれの方が持っているイメージを壊すことに、同意してくれるかどうか」ということでした。その中で、彼らはベストを尽くしてくれたと思います。

Q:日本映画のリメイクが相次いでいますが、それについてはどう思いますか?

山内プロデューサー:
日本の映画自体がある成熟期に差し掛かりつつある中で、日本映画そのものが1つの原作となり得る状況になってきたからではないかと思います。例えば、シェイクスピアの作品をまた作ろうとしても、特別騒がれる状況ではないと思うんですが、日本映画そのものが、小説や舞台と同じように原作となり得る状況にようやくなってきたのだと思っています。それが最近のリメイクブームと言われる所以かなと思っています。

樋口監督:
原作のバリエーションという意味で言うと、有名なコミックスや小説を映画化することと、僕の中での距離感はそれほどないですね。どちらにしても、50年前の日本というのは、外国と変わらないよその国のようなものですから、そこから新たに映画を作るということは、オリジナルであろうとどんな形であろうと、チャレンジには変わりないと思います。むしろ、今回のものに関しては、黒澤監督の素晴らしい作品と比べられる運命にある訳ですから、明らかにハードルが高くなりますよね。それはチャレンジの度合いとしては高いと思います。

Q:リメイクならではの醍醐味ややりがいはありましたか?

樋口監督:
やりがいはありました。私のような経験の浅い人間が、映画界の大先輩と繋がりを持てたような気がして、やって良かったです。撮影中に何度か黒澤監督の作品を見返したんですけれども、一番困難を極めたのは薪だったんです。4人がそれぞれ薪を背負うんですけれども、薪を背負ってしまうと、後ろにいる人間の顔が見えなくなってしまうんです。

だから、位置をずらすなどして、なんとか4人を同じ画面の中で見えるようにしなければならないんですけれども、それに毎日悩みました。「演技をしながらも、絶えず4人の顔が見えるようにしたい。それにはどうすれば……?」と、毎日毎日頭の中でシミュレーションしながら撮影をしていました。

そんな時に黒澤さんの映画を見たら、同じように苦労されていた様子がありありと見えてきて、「この薪で苦労したのは、今のところ黒澤監督と2人だけなのでは」と思うと、少し嬉しい気分になりました(笑)。

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